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ホールの物語

コンサート施設には、それぞれの「物語」があるような気がします。
それは建物にまつわるものだったり、演奏家にかかわることだったり。
芸術の舞台だからかもしれませんが、単なる建物という以上の存在のように思います。
以前住んでいた場所で、よく演奏を聴きにいったある中規模の公営ホールは、目立った特徴はありませんでした。土地柄だったのか分かりませんが、観客のマナーがよくないという声さえありました。
そのホールの幹部になった職員が、とても音楽好きの人でした。
彼はまず、プログラムに演奏会を聴く際のマナーを書き記すことから始めました。楽章の途中で拍手をするのはやめましょう、演奏中にプログラムをめくるのはやめましょう・・。表現は柔らかでしたが、演奏を聴きに行って説教をされているようだと、当初は批判の声もあったそうです。
それが何年か過ぎ、この施設は観客のマナーが良いという評判が立ち始めました。聴衆だけでなく、演奏家たちにも。ここで演奏したいという声も上がり、名の知れたアーティストたちのコンサートも開けるようになりました。今では遠方からも人々が足を運ぶホールのひとつです。
最初は地道な一歩でしたが、音楽の楽しみ方を伝えることで、ファンのすそ野を広げたことは間違いありません。
今でもその建物のたたずまいを懐かしく思い出します。
幸せなホールの物語です。
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author : cpbadm-f | - | -