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下校の音楽

音楽は記憶を連れてくる、と誰かが言っていましたが、曲と思い出はしばしば結びついているものです。
私にとってベートーヴェンのピアノソナタ第8番「大ソナタ悲愴」は、ランドセルや小学校の乾いたグラウンドの情景と結びついています。小学校の下校時間を告げる放送が、この音楽でした。
確か放送が流れるのは午後4時半でしたが、このメロディーが聞きたくて、教室やグラウンドにうだうだと居残っていたことがよくありました。
何の曲か知りたくて、高学年になってようやく放送委員の友達に教えてもらったタイトルが「悲愴」。楽器店でチャイコフスキーの「悲愴」のレコードを見つけ、お金をためてレコードを買いました。
ところがワクワクしながら針を落としてみると、全く違う曲。あの落胆は今も忘れられません。そのお陰で何の罪もないチャイコフスキーが、しばらくの間あまり好きになれませんでした。
結局、放送委員の友達が内緒でダビングしてくれたテープをしばらく聴き続けました。下校の音楽はチャイコフスキーでなくベートーヴェンの曲で、しかも3大ソナタとも言われる、初期の有名な作品だったと知るのは、もっと後になってからです。
その後、レコードプレーヤーは壊れ、あのチャイコフスキーのレコードもどこへ行ってしまったことか。でも二つの「悲愴」の旋律を思い出すたび、今も学校が終わる寂しさが甦ります。
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author : cpbadm-f | - | -